鎌倉朝日連載「スケッチ日和」

  「龍宝寺」 水彩画 36×51cm

龍宝寺」  黒川 明

       2024年5月号掲載

  

 龍宝寺は植木にある曹洞宗の寺。山門から本堂に向かう参道の両側にフランス菊や矢車草が揺れ、芍薬が盛り上がるように咲いている。広葉樹の林に囲まれて、五月の新緑がまぶしい。植物を育てることも修行の一つかもしれない。そう思って見ると、花々は勝手に咲いているのではなく、なにか一つの世界を作ろうとしているかのようだ。林も、建物も、背景の山も、空までもが。ここにはどこか遠くまでつながる独立した世界がある、のかもしれない。