「小町通り」

2019年8月号掲載 水彩31×41

 

 雨あがりの小町通りはしっとりと落ち着いた雰囲気だった。アジサイと海水浴との間の、束の間のことだ。まだ開店前の店も多い早い時間のせいでもある。

 新しい店ができてこの通りも少しずつ変化している。その中で「なか川」など、かつて鎌倉文士の集った店も営業を続けている。多様で、複雑で、ちょっと混乱してしまう。

 表面だけ見れば商いの街だ。なのに、商いだけの街とは思えない。矜持なんて言葉が浮かんでくる。

 午後にはまた雨が落ちてくるだろう。