「雨の江ノ島」 

 

2021年6月号掲載 

水彩画 31×41cm

 

雨が降っている。風も強い。傘がさせない。その中を自転車の女性が走って行った。濡れた路面にその影が映っている。形の定かでない、ぼんやりとしたその影は、くっきり浮かび上がる実像と対照的だ。

投映は色を形から解放する。形に従属していた色は、その役割から自由になる。色は、色そのものになる。

より強い風が吹き荒れて、自転車の速度が落ちた。それでも少しずつ進んでゆく。その先には江ノ島が横たわっていた。