「名越切通し」

 

2020年9月号掲載 

アクリル画 10号

 

 

鎌倉には七つの切通しがあり、これを鎌倉七口と呼ぶのだそうな。どれも、古い古い道だけれども、名越のそれは森は暗く道は糸のように細い、大きな岩の間をくねくね、ずるずると上り下りする道でな。魔物がいてもちっとも不思議でない。そんな道だが、登りきると、木々のあいだを通り抜けたおひさまと風が、そりゃあ気持ちいいもんだ。ススキや野菊も友達みたいに温かいぞ。

峠から道は二手に分かれるが、どちらへ行ってもその先は「現在」だ。